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COFFEE UNIDOS 田中 裕之さん[糸島と珈琲と、ひと。 - 第五杯目 -]

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COFFEE UNIDOS 田中 裕之さん[糸島と珈琲と、ひと。 - 第五杯目 -]

2018.09.01

糸島で一番都会な町 筑前前原。

都会とは言っても高いビルが立ち並んでいるわけではなく、日用品を買い揃えられるスーパーや本屋、チェーンの家電量販店にファミレスなどが車で15分圏内にあるというだけのことではあるのだけど、僕もここに住みはじめて2年半が経ちその都会な " 町 " の程よい勝手の良さと静けさにすっかり魅了されてしまった。

 

この " 町 " には顔とも言える東西に伸びる商店街があって昔から続く老舗店だけでなく地元出身の若い方が開業された店も多い。

 

その中でも遠方から糸島へ来る人たちが立ち寄るお店として長らく愛されている「ここのき」という地元作家の作品を多く取り扱う雑貨店があり、店内に一軒のコーヒー屋が併設されている。

 

Tana Cafe + Coffee Roaster。

 

今回はTana Cafeのオーナー田中裕之さんが前原からもほど近い浦志に一昨年OPENされたCOFFEE UNIDOSに伺い、淹れていただいたブレンドで喉を潤しながらお話を聞かせていただきました。

夏の接近を肌で感じるには充分な気温だったこの日に飲んだホットコーヒーは少し汗をかいた体へすっと染みてとてもおいしかった。

 

黒くて大きな焙煎機から漂う香ばしい豆の香りが充満した店内を想い浮かべながら読み進めていただければ幸いです。

 

地元糸島で珈琲店を営むまで。

 

ー筑前前原にあるお店「ここのき」さんに構えられているTana Cafe + Coffee Roasterに続きCOFFEE UNIDOSも一昨年OPENされましたね。

今日はオーナーでもある田中さんのことを聞かせてください。

 

田中さん : 

「地元は糸島の多久って言う伊都安蔵里に向かう途中のあそこです。

学生時代はずっとサッカー部で昔はアメカジとか好きで雑誌Boon!を読んだりしてました。

リーバイスとかAIR MAXが流行ったりしたあの時期ですね(笑)

当時めちゃくちゃ詳しい店員さんとかたくさんいましたよね、僕らはその終わり頃の世代ですけどひとつ上の世代の人たちはよりそういう人が多かった。

あの頃は部活の時間になるとジャージの下に買ったばっかりのジーパン履いて外周走ったりサッカーとかしてました、汗でアタリを早く出したい!とかヒゲを出したいとか(笑)」

 

 

田中さん : 

「大学卒業まではずっと糸島で就職のときに大野城に住んだりもしましたけど福岡からは出ていなくて、24歳の頃にコーヒー屋さんへ就職をしました。

 

 

大学卒業するちょっと前、室見のとある喫茶店でコーヒーを飲んでたんです。

お店の人がコーヒーをドリップしてる姿がかっこいいなあと眺めていて、自分もやってみたいとふと思ったらそのお店が求人をたまたましてたんで「働きたいんですけど」と後日電話して働き始めることになりました。

そこに就職したのがコーヒーに直接携わるきっかけになって一年半くらいはそこにいましたね。

 

その後他のカフェでも働いたりして27歳の時にTana Cafeとして多久の実家の庭にある狭い小屋に焙煎機を入れて自分で焙煎を始めたのが最初です。

バイトと掛け持ちしながら豆の卸をしたり、小さいですけどエスプレッソマシーンも入れてそこで飲んでもらえるようにもしていました。」

 

Tana Cafeが前原へ移転するきっかけになった出来事

 

ー自宅のガレージが始まりというのはなんだか素敵ですね。

Tana Cafeが自宅から前原へ移転するまでにはどんな流れがあったんでしょうか。

 

田中さん : 

「2年間実家で焙煎をしていた時にお客さんとしてここのきの方がいらっしゃったんです。

『今度商店街に店を出そうと思っていて喫茶出来るスペースがあるんだけどどう?』と声をかけてもらって、これも縁かなと思って一緒にやりましょうと返事をしました。

あそこは最初八百屋さんだった建物で飲食の設備ももともとあったみたいなんです。

 

前原へ移転して今年で8年、自宅で焙煎を2年やってたのでTana Cafeとして始まったコーヒーの仕事もちょうど10年になります。」

 

 

ー創業当時と今とで焙煎に向けた想いに変化はありますか?

 

田中さん : 

「【自分がおいしいと思えるものを出す】、それしか無いかなと思っています。

自分がおいしいと思うものが毎年バージョンアップしていくというか、変わっていきますし長く続けてきておいしいと感じるものの幅が広がりました。

若いときはこうじゃないといけないというのがあったけど今はこれもありこれもありと段々増えてきています。

 

 

最初に勤めた喫茶店は焙煎もやってたこともあってそこで働き出した時に自分でもいつか店をやりたいというのはぼんやりとあったし自分の出しているコーヒーがおいしいと思ってたんです。

でもその後他のお店をまわってみてあれ?あれ?って。

そうかそうか、おいしい店は他にもたくさんあるんだなと思ったんですよね。

うちで出してたコーヒーってそうでもないのかなと思うことも何度かあったのでもっとコーヒーの勉強をしたいなと。」

 

 

田中さん : 

「お店を出したいとはっきりイメージが出来てきたのはエスプレッソマシーンを触った時でした。

『焙煎して、エスプレッソして、ラテ出して。こういうのしたい!』と思ったんです。

 

独立前に働いたカフェで初めてエスプレッソマシーンに触ったんですけど当時、約10年前は自家焙煎でエスプレッソやカフェラテまでやってるお店って福岡市内にはちょこちょこあったもののそれでも多くはなかったですしチェーン店くらいしか無かったんですよね。

エスプレッソはマシンが高いので初期投資もかかりますし(笑)

なので糸島にもそういうお店はほぼ無かった。

 

自分は糸島の生まれなので糸島に無いなら自分がやろうって」

 

 

—自宅での焙煎にはじまり10周年を向かえられるわけですが、今振り返ってみていかがですか?

 

田中さん : 

「やっと10年かと言う感じです。

最初はお客さんも全然来ないですし宣伝の仕方も分からない、どうやって広げようかとか経営の仕方も分からない。

経営に関しては今でもそうですけどそういう想いは常にありました。

10年続けていると良いときそうでない時いろいろありますけど、一番しんどかったのはここCOFFEE UNIDOSをOPENさせた時でしたね。

 

2017年の夏、体調面が悪くて一週間Tana Cafeも合わせて閉めたときがあったんです。

卸先の方からは豆の注文はもらっていたので店は休んでいるけどやる作業はある。

一週間店を閉めていても体は休まらなかった、でもお客さんに豆を待ってもらえていることで救われた部分は大きかったですね。

待っててくれてたんだなと。

『豆がない豆がない。』『すみません。』みたいな(笑)」

 

 

—コーヒー豆っていうのは生活の一部になるものだなと思ってたりするんです。

シャンプーや歯磨き粉、お米、美容室をなかなか変えられないのと似ていてコーヒー豆も一度体に馴染んだら変えられないなあと。

 

田中さん : 

「そうですね、なのでまた店を閉めたり同じ事を繰り返さないよう悪い方へ行きそうな予感がしたら気持ちを切り替えるようにしています。

趣味らしい趣味がなかったんですけど最近は小さいドローンを買って飛ばしてたりします。

結構リフレッシュ出来るんですよ(笑)」

 

 

—田中さんにとってTana CafeとCOFFEE UNIDOSとの棲み分けの違いはどういった部分ですか?

またUNIDOSという名前の由来は。

 

田中さん : 

「Tana Cafeはここのきさんと一緒にやっているカフェという感じなのでUNIDOSがその二号店かというとそれは少し違うんです。

 

もともと自分はコーヒーメインのコーヒー屋としてスタートしている。

Tana Cafeが前原へ移転してからは実家の小屋でコーヒーを提供するような営業はもうしてなかったので、実家で自家焙煎しているんだけど焙煎機自体はお客様の目に触れないから『どこで焙煎してるの?』とはよく聞かれてたんです。

どうやって焙煎している様子をアピールしようかなと思って “ 自家焙煎の店 ” という原点に戻るというか、実家でコーヒーの提供までやっていた頃に近いカタチにしたという感じがUNIDOSです。

なのでここができるまでは実家でずっと焙煎してました。

 

 

6年前から海外へ直接豆の買付けへ行くようにもなりました。

そしたらだんだん現地の生産者の方とも仲良くなってきて、行くたびによくしてくれるんですよね。

その一人が " UNIDOS " というスペイン語の書かれた一枚のTシャツを『作ったよ』と僕にくれたんです。

英語で言うUNITEDという繋がりを意味する単語なんですけど “ コーヒーで繋がっているよ ” ってメッセージなんだと言ってくれて。

じゃあこれ次のお店出すときがあったら使うよと伝えていて、それでこの名前にしました。

 

 

でもその方が今年の正月事故で亡くなっちゃったんです。

農園に行くまでの道が舗装もされていないガタガタの山道で細いんですよ、そこを車で通ってる時に崖から転落して亡くなったっていう連絡が正月にあって。

 

彼の23歳くらいの息子が何年か前から手伝っていて、今はその子ががんばってくれています。」

 

 

—これまでのコーヒー人生の中で忘れられない出来事は。

 

田中さん : 

「店をOPENしたときの事も忘れられないですけど、初めて産地に買付けに行って実際に豆が実ってる木だったり " リアル " を初めて見た時ですかね。

 

これが店に来るんだ!と。

 

『君の豆は来週収穫するよ』とか、『送るやつを今乾燥させててそれがこれだよ』とか。

以前は商社から豆を買い付けていてその頃は『これはブラジルのどこどこ農園の豆です』とかまでしか言えてなかったけど今は『どこ農園の誰がこんなところで作ってるんです』と実際に行ってるからこそ伝えられる部分も出てきた。

 

そうすると商社で買った豆と買い付けた豆をお店で並べていて『どれがおすすめですか?』ってお客さんに聞かれたら迷わず『これです』と買い付けた豆を当然薦めてたり熱の入り方が変わったんです。

もちろん商社の豆も悪いわけではないんだけど気持ちの入り方が違う。」

 

 

—他所の子とうちの子、みたいな感じでしょうか()

 

田中さん : 

「そうそう、なんか嬉しいんですよね。

早くお客さんに飲んでほしいなと。

今は自分が直接足を運んで買付けてきた豆だけでやってるんですけど、生産国それぞれの味っていうものも確かにあるので買付け以外の豆も置いていいのかなと最近は思ったりしています。」

 

 

 

UNIDOSさんで配布されている豆紹介の冊子には現地の生産者のことや豆の詳細が写真付きで丁寧に紹介されていて、これを自社でされている方ってなかなかいらっしゃらないなと思いながら拝見していました。

 

田中さん : 

「海外へ買付けに行くようになったのもきっかけがあって、別のコーヒー屋さん勤務時代に買付けしてるって方がたまたま店にいらっしゃったんです。

買付けしているグループがいくつかあることは知ってたんですがそのグループの別の方に二ヶ月連続でお会いしたりとかして。

いろいろ話してる中で『それ一緒に行けたりするんですか?』って聞いたら『今度岡山に現地から生産者が来るから来ます?』ってことになり岡山まで一緒に行ったんですよね。」

 

 

—コーヒー買付けも店舗での出逢いがきっかけ、ドリップしてる姿をみてコーヒー屋になろうと思ったのも店舗だったというのは感慨深いものがありますね。

Tana CafeとUNIDOS、ここでもこれからいろんな出逢いが生まれると思うのですがそれぞれのお店に足を運ばれるお客様にへどんなものを味わってもらいたいですか?

 

田中さん : 

「Tana Cafeはどちらかというとのんびり飲みに来てもらえる場所ですね。

UNIDOSは豆から出来上がりまで見てもらえる場所なので飲むだけじゃなく麻袋で実際に豆が届いてるんだ、とかそういった部分も楽しんでもらいたいです。

 

豆もこちらからおすすめをすることはあるんですけどどっちの店でどの豆を飲んでほしいというのはあまり無くて。

焙煎何日目なのかでも味は変わってきますし、朝作るテイスティングで味見した時に『今日はこれがおいしい』ってなったものをまずこれ飲んでくださいと推すようにしています。

あとは好みもあるじゃないですか、そのお客様の好みも聞きつつ試飲してもらってから豆を決めてもらいたい。

 

僕個人としては浅煎りがおいしいと思ってるんです。

店にはニカラグアとエルサルバドルの中米二カ国の豆を入れています。

深煎りは深煎りでおいしいですけど、浅煎りの方が豆のキャラクターというか味わいが出るんですよね。

酸味とフルーティーな甘みがおいしいなと僕は思っています。」

 

これからのこと。

 

田中さん : 

「海外への買付けには行ってますけど、今僕の中ではうちの店でしか売りませんよという感じではないんです。

僕だけじゃ買えないくらいいいものって向こうにいっぱい眠ってるし生産者もたくさんいるんですよ。

農園の規模も大小あるしおいしいコーヒーはたくさんある。

 

ちょっと違った作り方をしてるものもテイスティングしてみるとおいしい。

全部は買って帰れないから誰か買うよと言う人が現れたらいいなと思う豆もたくさんある。

生産者も豆が売れたら嬉しいし、だからそういう情報をシェアすることを少しづつできたらいいなと思っています。

 

例えば糸島のコーヒー屋さんでなかなか海外へ買付けに行けない人に声をかけて必要なものを自分が買い付けてくるとかできたらいいですね。

今後撮ろうと思っているドローンを使った農園の動画も写真も情報も全部豆と一緒にオープンに渡す、今時代もそうじゃないですか。

自分たちだけでっていうのも時代に合っていない気がするんです。

 

そういう10年になるといいですね。」

 

 

ー糸島はコーヒー屋さんの数も増えましたしこれからより盛り上がっていくとおもしろいですね。

今日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 

遠く中米から日本へ届いた " 繋がっている " 「UNIDOS」という言葉。

その想いを確かに田中さんは受け取って、そして今度は田中さんの手から糸島全体へ広がりつつある。

これからの10年、それらは福岡だけに収まらず日本中に広がっていくような予感がしています。

 

中米と日本を繋げた想いがいつか世界へと繋がっていくのをぜひこの目で見てみたい。

その瞬間を田中さんの淹れたコーヒーを飲みながら迎えられたら本当に素敵だと思う。

 

きっとその日は夏の接近を肌で感じるには充分な気温で、この日に飲むホットコーヒーは少し汗をかいた体へすっと染みてとてもおいしいと感じるはず。

 

 

文・絵 : 山口達也

写真 : tokuto(写真家)

 

《SHOP情報》

COFFEE UNIDOS -コーヒーウニドス-

場所 : 福岡県糸島市浦志2-14-17 井上ビル101

OPEN 10:00-19:00

定休日 : 水 

TEL : 092-335-3394

Facebook : https://www.facebook.com/coffeeunidos/ (UNIDOS)

         https://www.facebook.com/tanacafecoffeeroaster/ (Tana Cafe)

Web : http://tanacafe.jp/

 

 

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