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とびばこ珈琲[糸島と珈琲と、ひと。 - 第一杯目 - ]

とびばこ珈琲[糸島と珈琲と、ひと。 - 第一杯目 - ]

2018.02.14

「少し上手になったので見てもらってもいいですか?」

会計を終えた僕にいつものやわらかい話し方でそう言いながら前回よりなめらかな手つきでお金が消える

コインマジックを見せてくれたのは糸島の筑前前原駅近くで自家焙煎のコーヒーとラテ、半年間試作を繰り

返してレシピが出来上がったホットサンド、" 元気になってもらう " というもともとの由来を大切に

しながら作られたティラミスを提供されているとびばこ珈琲の松本美文(まつもとよしふみ)さん。

 

店内には蚤の市や古道具屋さんで見つけてきた雰囲気のある棚や小物があり、

お気に入りのものに囲まれた空間が広がっている。

 

珈琲との出逢い。

 

ーー前原にお店を構えられて先日一周年を迎えられたという事で、おめでとうございます。

  松本さんがコーヒーに携わるようになったのはいつ頃からですか。

 

 

松本さん : 

「中学3年の頃部活から帰って試験勉強なんかで夜遅くまで起きていなくちゃいけないという事がでてきて、

最初は栄養ドリンクで目を覚ましてたんですけど次の日あんまり身体の調子が良くなくて。

そうしてたら親に 『コーヒーでも飲んでみたらどうだ』と言われて飲みはじめたのが最初です。

 

これはおいしい飲み物だと思って飲んでたんですけどそれでも胃が痛くなったりとかして。

どうやったらそうならないか当時はネットもなかったので本でたくさん調べたら新鮮なコーヒー豆だとそうならないというのを見つけて、急遽自分で焙煎をはじめました(笑)

どこの豆がいいかなんて知識もなく分からなかったですけど、とにかく豆さえ手に入ればと近くのコーヒー屋

さんに無理言って生豆を売ってもらって、自宅のフライパンで焙煎したのが最初です。

 

でも周りには内緒にしていて、友達には『炭酸飲料っておいしいよね!』って言って隠してました(笑) 」

 

学生から教員免許取得、工業部品設計会社に就職へ

ーー炭酸飲料(笑)

  学生の頃にはすでにご自身で焙煎をされてたというのは驚きました。

  当時からコーヒー屋さんになろうという想いはあったんですか。

 

 

松本さん : 

「コーヒー屋さんになるつもりはなくて高校の歴史の先生になりたかったんです、

大好きなんですよ歴史が。

教員の免許を取るために大学へ行って、学芸員(博物館職員)の免許と迷って。 

結局どっちの免許も取っちゃいました(笑)。

 

そこから修士号を取るには大学院まで通わなくちゃ行けなくて、じゃあまずお金を貯めようという事で

工業部品設計会社の面接を受けに行ったんです。

 

僕は文系なので営業志望で面接をお願いしたんですけど、面接官の方が『これまでに熱中したものはなにかありますか?』と質問されて、『ミニ四駆ですかね。』と答えたらその方の目の色が変わって(笑)

『どの車種が好きでしたか?』とさらに突っ込まれて

『まずはアバンテジュニアからですかね、でもエンペラーの白いボディもサイド削ってメッシュにするとすごく空気抵抗がなくなって、、、』みたいな。

 

面接された方もミニ四駆が好きだったみたいで『ベアリングをですね、変えるんですよ!グリスも純正のものではなく市販の少し粘度のあるものを塗ったあと走らせるといいんですよね!』とかっていう話を熱を持ってしたら営業志望で面接に来たのに設計部門で採用してもらえました(笑)」

 

 

松本さん : 

「当時自動車部品の型を冷却する配管パーツを設計していて、設計の仕事がものすごく面白かったため、大学院にはいきませんでした。

 

リーマンショックの影響で早期退職の話が出始めて、こんなに大きな企業でもひとがこうやって切られていくんだなと。

そこから大きな企業に属するんじゃなく自分でなにかしたいと思って中部地方から実家のある福岡へ戻ってきたのが2006、2007年くらいです。

とりあえずバイトをしようと思って飲食店のホール希望で面接に行ったら採用はしてもらえたんですけどホール用の制服が小さくて着れなかったんです。 その結果キッチンで働く事に(笑)。

 

一年ちょっと他との掛け持ちもしながら働いてお金を貯めて、それから自分でお店を出そうと動き始めました。」

 

オムライス屋さんをしようと思っていました。

 

ーーさきほど " コーヒー屋さんになるつもりではなかった " と言われていましたが

  貯められた資金で何のお店をされる予定だったんでしょうか?

 

 

松本さん : 

「実は最初はオムライス屋さんをしようと思っていました。

働いてたお店で毎日何個もオムライスを作っていて、いろんな試作もしてたんです。

コーヒーも好きなのでちゃんとしたものを出したいと思って、どこから豆を買おうかと探しはじめました。

そうやってオムライス屋さんの準備で豆を探したり買ったりしているうちに " やっぱりコーヒー屋さんがしたい! " と思って本格的に動き始めて物件を探しはじめました。

そこから3年はいい物件がなかなか見つからなくて移動販売や出店で営業していたんです。」

 

 

コーヒーと同じくらいカメラも好き。

 

この日、写真家のtokutoさんも同行してもらっていて、撮影に使用されていたFUJIFILMの一眼レフに取材中興味を持たれてる様子。

 

 

 

松本さん : 

「もともと父親がカメラ好きでよく借りて出かけてたんです、それで大学の頃は写真部に入ってました。

撮るのも好きなんですけどどちらかというとメンテナンスすることが好きで、今ちょうどメンテしてるカメラがお店にもあるんです、昨日から一眼レフのデジカメを分解しはじめて。

父親が使っててぼこぼこにしてたペンタックスを勝手にもらってきて、分解はじめたら配線が切れてるのが分かったので、650万画素だし壊れてもいいやと修理をはじめました。

部品取りのためにジャンク品買ったりとかもよくします。

メンテナンスはフィルムカメラのほうが、デジタルよりもおもしろい!」

 

松本さん : 

「オリンパスが好きなんですよね、特にオールドのレンズはすごくいいんです。

本体に関しては最近はSONYもいいですね、中身がコンピューターになったことで精密機械会社が作りはじめて。

質がいいですよね。

シャッターを押した感じとかはどうでもよくなってしまいましたけど精度がよくなった。

昔はFUJIFILMとかNiconとかシャッターを押した時の感じが好きでした。

最近はFUJIFILMかオリンパスのpenが欲しいです(笑)。」

 

これまでの経験がコーヒー屋さんに生きている

 

ーーここまでお話を伺わせていただいて松本さんのどんな分野にも前向きな姿勢、関心を持たれた事への熱の

  高さなどがそのままコーヒーにも生かされているように感じます。

 

 

松本さん : 

「エスプレッソマシーンの小型のものであれば自分でメンテナンスしたりもします。

こういうのがきっと好きなんですよね、カメラもミニ四駆もそうですけどギアが重なって回ってるとか。

 

カメラも修理する時はこうやってテープでネジとかを分かるようにしとくと分かりやすいですよ!」

 

 

そうやって見せていただいたのは手描きのいびつなカメラのシルエットに、

取り外したネジをテープで貼付けられた図面。

 

丁寧さと作業の細やかさはここにもしっかり出ています。

 

歩みをはじめた店舗としてのとびばこ珈琲

 

松本さん : 

「移動販売でのとびばこ珈琲創業当時からこの店舗オープン初期は自家焙煎じゃなく

お店から豆を買って提供させてもらっていて、結構糸島でも買ってました。

自家焙煎になってからは商社さんからサンプルを送ってもらっていろんな焙煎の仕方を試して、

今はその中から選んだものをブレンドしています。

今使っているのはグアテマラの農場のものをメインにコスタリカ、コロンビアとか。

あと最近はミャンマーのものも使わせていただいています。

 

僕の焼き具合が中煎りにちょっとプラスくらいでやっていまして、そのくらいがまるく収まって好きなんです。

イタリアンローストとかフレンチローストといわれたりする黒々としたものって

過度の苦みが出たりもするし、ものすごく浅煎りだと過度な酸味が出たりもする。

いろいろ試してうまくまるくなるのがこのくらいかなと調整しています。

 

ただ、好みに合わせて本当は深入りのものを出したりもしたんです。

 

かれこれ一年くらい新しいブレンドを出したいと言ってるんですけどまだできてないですね、

何回も焼いて納得のいくものができたら出したいです。

今現地点で納得しているものは出せているので次の目標ですね。」

 

これまでと、これから

 

ーー松本さんの半生を振り返るような流れで今日はお話を聞かせていただきましたが店舗OPEN2年目に入った今、これから見て行きたい未来の景色はどういったものがありますか?

 

 

松本さん : 

「昔ドリップの大会にも出たりしたこともあったんですけど極度の緊張しいなのでもう出ないですね(笑)

その時も6分以内に出さないといけないのを9分かかってしまって。

でも途中から楽しもう、納得できるものを淹れようと切り替えたんですよね。

審査員の方には『とても楽しそうでしたね!』と言われたり(笑)

 

いつか従業員さんをお雇いすることがあってその方が出たいとなれば流れは分かるので

いろいろお伝えしたいなと思っています。

 

このお店を10年20年続けていきたい、建物が古くなって引っ越すことはあるかもしれないですけど

どこかにとびばこ珈琲が必ず存在しているようにしたい。

そうした上で雇用を生みたいんです。

アルバイトからでもいいのでこのお店で働きたいと思っていただいたら会社にもしていきたい、

そのタイミングで社員さんとして雇わせていただいてゆくゆくは2店舗にはしたいなと。

 

味はどこに行っても一緒です、でも店舗はそれぞれに個性がありますみたいな。

 

どうしてもな時は自分も出て行くけど、基本はそれぞれにお任せして自分は焙煎士としてそのお店に卸しにいくという感覚で経営をしたいなと思っています。」

 

 

松本さん : 

「ありがたいことに僕がいるから来てもらえるというのもとても嬉しいんです、

でもそれが過度に行き過ぎてしまうと従業員さんを雇わせていただいた時に僕がいないときにいらっしゃった

お客様がじゃあ今日は帰ろうとなってしまうと一緒に働いてもらってる方としてはつらい想いをさせてしまう。

同じクオリティで一杯づつを出せるようにして僕じゃなくても楽しんでもらえる状態にしていたい。

 

カフェをいつか経営したい、という方をお雇いしたいですね。

 

3年くらいでもしかしたら独立されるかもしれないですけど、うまくいけばここでずっと働きたいと

思ってもらえるかもしれないのでそう思ってもらえたら、よし会社にしよう!と思っています。

 

そんな方にいつか来てもらえたら嬉しいです。」

 

 

ーーきっとそんな日がそう遠くないうちに来る気がします。

迎えられた二年目のとびばこ珈琲のこれからを僕も楽しみにしています。

今日はお忙しい中ありがとうございました。

 

 

 

 

二月に入って間もないとびばこ珈琲さんの店休日。

 

お話を聞かせていただいている途中大好きだという古道具の話や、

ドラえもんのジャイ子ちゃんが将来大出世する話、

一緒に同行してもらってた写真家のtokutoさんとのカメラ談義などどれも深く楽しそうに

お話される様子がとても印象的でした。

 

ひとつひとつの事にまっすぐ楽しみながら取り組まれている姿勢は珈琲の自家焙煎作業にもきっと現れてる。

SNSの更新を最小限にしているのは店頭のお客様としっかり向き合うため、という理由だってそう。

 

コーヒー屋さんの名前って英語で憶えにくいから誰にでも馴染みのある名前にしたい、

そう思いながら眺めていたテレビのニュースで子どもたちがとびばこを飛んでいる映像が流れたのを

きっかけについた【とびばこ珈琲】という店名の由来にも、その後来ていただくことになるお客様への

想いやりを感じます。

 

 

きっと今日も少し上手になったコインマジックを披露されているのではないでしょうか、

コーヒーいっぱい一杯と、そこに足を運ばれるお客様ひとり一人への感謝を込めながら。

 

 

絵・文 : 山口達也

写真 : tokuto(写真家)

 

《SHOP情報》

とびばこ珈琲

〒819-1119 福岡県糸島市前原東1丁目4−10

OPEN : 11:00〜19:00

CLOSE : 月・火

TEL :  092-324-8797

facebook : https://www.facebook.com/tobibakocoffee/

 

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