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TAISHO COFFEE ROASTER 田之畑隆介さん[糸島と珈琲と、ひと。 - 第四杯目 -]

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TAISHO COFFEE ROASTER 田之畑隆介さん[糸島と珈琲と、ひと。 - 第四杯目 -]

2018.04.29

筑前深江の珈琲店 TAISHO COFFEE ROASTER

 

まだ肌を撫でる風が刺すように冷たかった去年の大晦日に持て余した休みの午後をどう過ごそうかと悩みながらふらりと立ち寄ったTAISHO COFFEEさん。

その時にお店はもう閉まっていたものの店内にいらっしゃった田之畑さんがせっかく来てもらったのでと淹れてくれた一杯のブレンドがこのお店の顔とも言えるFukae Blendだった。

 

かじかむ手と冷えきった体で飲んだそのコーヒーが喉を通って体のどこを流れているのかはっきり分かるほど染み渡ったのをここに来るといつも思い出すんです。

日本人は何かがあるとささやかな手土産を持って人に会いに行ったりするものだけど、仕事の合間などちょっとした瞬間にどうぞとコーヒーを差し出し労うその " 瞬間 " というのは日本人が大切にしてきたそんな心配りに通じる部分があるように感じる。

 

今回はその時に僕が感じた温度をそのままみなさんに届けられたらいいなと思いながら綴っています。

 

珈琲屋に興味をもったのは母の影響でした

 

ーその節はどうもありがとうござました。

今日は改めてTAISHO COFFEEさんのことを聞かせてもらえればと思っています。

そもそもの話にはなりますが珈琲屋さんになろうといつ頃から思っていたんですか?

 

 

田之畑さん : 

「もともと子どもの頃から珈琲屋さんをしたいと思っていました。

母親が珈琲好きでカフェとか喫茶店という空間が好きだと言う話をずっと聞いていたので、確かに好きな音楽を聴きながらお店ができたら幸せだろうなとぼんやりと思っていました。

最初は定年後の夢みたいな感じで考えていましたね。

 

地元は福岡市の中央区港と言って西公園のあたりです。

福岡の大学に通っていたんですが、コーヒー屋をやることに関しては本当にぼんやりだったので大学出て就職どうするってなったときはどうしようかなと。 

たまたま一個上の先輩が広告代理店を志望していてその話を聞いていたから「広告ってかっこいいなあ」とそのまま広告代理店に就職しました。

ある意味流れに流されやすいようにできてるんですよ僕(笑)

 

 

勤務地が山口県の徳山市(現周南市)で5年働く中で結婚をして、二人とも福岡が地元だったこともあり何となく徳山で子どもを育てるよりは地元で育てたいという想いがあったんです。

本社は福岡だったものの地元で勤務というのはなかなか難しそうだったので仕事を辞めてカフェをやるという夢を前倒ししようと30歳の頃に福岡へ戻ってきました。」

 

 

田之畑さん :

「実は福岡に戻ってきたときからいつかお店をやりたいというのを周りには話していたんです。

引っ越したすぐの頃は知り合いがやっている居酒屋さんや天神の地下街にある小さいカフェでバイトしながらカフェの勉強をしていました。

ひとりで店をやるんだったらどのくらいのお客様の人数に対応できるんだろうとかどういう動きができるんだろうとか。

 

バイトを掛け持つ生活を二年くらい続けながらドリップの講座とかにも行ったりしていましたね。

今思うとよくやれていたなと思うくらい働いてましたけど当時は意外と大丈夫でしたね、ただ日々常に眠たかったです(笑)」

 

 

—お休みの日に珈琲を飲みに行くことも昔から多かったんですか?

 

田之畑さん : 

「そうですね、多かったです。

でも全然 “ 通な好き “ というものではなくてただ単に近くの喫茶店へ行くという感じでした。

普通に珈琲が好きな人の家に育ったというんですかね。

うちにも豆を挽くコーヒーミルはありましたけど普段はインスタントで出てましたし全然味にこだわりとかはなくて、学生時代にカフェでバイトした事とかも無かったです。」

 

カフェをはじめる気持ちの変化

 

ーカフェをやりたいという想いをずっと持ちながらいつかOPENするお店の準備を少しづつされていたわけですが、本格的に始めようとなるにあたりどういった心境の変化があったんでしょうか。

 

田之畑さん : 

「子どもができて、一度仕事を辞めて福岡へ来たので次に働くんだったら別の会社に入るとかではなくカフェのために仕事をした方がいいだろうと思って動き出していました。

 

その時は何年後に店をやろうとか、開業にいくらかかるとか、何が必要なのかとかも全然頭の中には無かったですしどういうカフェにしたいというイメージも無かった。

 

でもいろんなお店に行ってみて自分がおいしいと思う珈琲とそうじゃない珈琲があったんです。

もちろんおしゃれでおいしいお店もあればおしゃれだけどおいしくないお店といろいろあるわけじゃないですか。

この違いってなんだろうって考えていく中で “ 豆 ” なんじゃないかと思って焙煎の方が気になってきたんです。

 

僕は全然器用じゃないしおしゃれでもないのでいわゆる『おしゃれなカフェ』というのは向いてないんだと思うんです(笑)

流行り廃りに負けないものってなんだろうって考えたら味だなと。

じゃあその味を決めるのはなんだろうってなった時に焙煎なのかなと思って焙煎をするというところにたどり着きました。

 

 

焙煎に興味が沸いてからは『焙煎屋』というお店で修行をさせていただいてそこを卒業した後は再度開業資金を貯めるためにさらに二年違う仕事をしてたりもしたので足掛け6,7年開業までに時間が掛かったんです。

カフェやるやる詐欺ですよ(笑)

最初の頃は周りにもいつお店やるの?とか聞かれてましたけどいつの間にか聞かれなくなってました(笑)」

 

 

—資金を貯められる中で開業を決められたタイミングは何がきっかけでしたか?

また糸島にお店をだそうと決めた理由はなんだったんですか?

 

田之畑さん : 

「やっとお金がやっとたまったというのが一番ですね。

 

僕は筑前高校の出身で糸島に友達も多かったんです、嫁さんの実家も志摩なので福岡に戻ってきてすぐその近くの前原に住んで、5年くらい前から深江に住んでいます。

家からも近い場所でお店をやりたかったというのと志摩や前原にはカフェはもうすでにたくさんあって深江にはまだなかったのでここでやろうと思いました。

最近は深江近辺もお店がちょっとづつ増えてきていて、しかもいいお店が増えてるのは嬉しいですね。

 

個人の感想ですけど、深江がすごく好きなんです。

 

海岸も近いし山も近いし天神へ出るための駅も近い。

さらに西九州道の入り口も近いから交通の便がすごくいいんです。

なにかと住みやすいですね。」

 

TAISHO COFFEEという名前で念願のカフェOPEN

 

ーいよいよTAISHO COFFEEとしてOPENすることになりますね。

屋号となったTAISHO COFFEEの由来は?

 

田之畑さん : 

「TAISHO(大将)というのは高校のときのあだ名なんです、全然大将って感じでもないし昔ヤンキーだったわけでもないんですけどね(笑)

当時は今の自分がそのまま幼くなったような感じだったんですけど友達のひとりが大将と呼びはじめてその身の丈に合ってないあだ名がいつのまにか広がった。

未だにその頃の友達が大将と呼んでくれるということはなにか縁があるのかなと思ってこのあだ名みたいに長く続いてほしいという想も込めて名前にしました。

 

ちなみに大将と呼ばれはじめた理由は分からないんですよ(笑)

たまたま学校の合宿で一緒になった友達が突然呼び出してそれからずっとです。」

 

お店の顔でもある鳥のトレードマーク

 

ーTAISHO COFFEEと言えば鳥が豆の袋をくわえているこのマークがもうお馴染みになっていますね。

 

田之畑さん : 

「糸島で絵を描かれる宮田ちひろさんという方がいらっしゃるんですが、内装をやっていただいた方に紹介してもらって描いていただきました。

 

鳥のイメージはぜんぜん自分には無かったんです。

『コーヒー豆っていろんな国から日本に運ばれて僕らが焙煎してお客様に届けるという流れがすごいことだと思う』と最初の打ち合わせで話してたら後日もらったいろんなロゴのパターンの中にこの鳥のものがあって、もう一目惚れでしたね。

 

ロゴ自体も可愛くて気に入ってるんですけど、カフェのロゴって一般的にはすごくおしゃれなのが多いじゃないですか。

僕はおしゃれすぎるのは昔から苦手だったのでこの鳥の手描き感と肩の力抜けた感が気に入っています。

内装もこのロゴマークをベースに白い壁にしたり船についてるようなランプを店内の照明にしたのもそれが理由です。

 

この鳥の名前は知らないんですけど実は深江海岸付近にいる鳥なんですよね。

お客様にもそれを伝えると見たことあるって方も多いので馴染んでもらえてるのかもしれません。」

 

そしてOPENから一年半経ってみて。

 

田之畑さん : 

「2016年10月29日にOPEN、2018年の4月でOPENから一年半が経ちました。

少しづつお客様もついてきていただいて割と理想に近くなってきています。

 

うちは珈琲豆屋なので極力コーヒーを楽しんでいただきたいと思ってお客様の席は自分の立っているレジ側ではなく壁側向きのカウンター席になっているんです。

壁側に座ってもらうことでお客様同士で会話もできるし壁を向けばひとりにもなれる。

その点はお客様にもいいですねと言ってもらえることが多いです。

 

奥には二名掛けの隠れたテーブル席もありますよ。


 

最初は販売スペースと飲食スペースをきっちり分けようと思ってたんですけど、内装工事を担当してくれた方と相談して動線を考えて豆売りと飲食提供も一人でまわれるようにしようということになって今の間取りになりました。

内装をお願いする上であまりおしゃれになりすぎないというところと、老若男女誰でも入って来れるような感じにしてほしくてシンプルな作りにしてもらいました。

車じゃないと糸島って動きにくいので駐車場も絶対用意したかったんです。」

 

 

—そういえばこちらでは持ち込み全面OKなんですよね、カフェで持ち込みOKというのはあまり耳にしないのですがそうされている理由は?

 

田之畑さん : 

「お話した通り僕は器用じゃないので料理とか全然作れないんです。

作ったところで糸島にはおいしい店がたくさんあるしそこに勝とうなんて思ってもいない。

珈琲をおいしく楽しんでもらいたいし料理はなにも出せないから持ち込みは全面OKにしているんです。」

 

焙煎について

 

田之畑さん : 

「どの豆もおいしいのは豆が本来持っている力なので僕はその力を生かす焙煎をしたいなと心がけています。

ハンドピックだったり時間をかけてエグみを消したりするこだわりはありますがおいしいものを届けたいというのが一番です。

 

今浅煎りが流行っていてそれはそれですごく酸味があってフルーツ感を味わえたりする反面エグみが多いような気がしていて。

カフェをされてる方ってそれぞれにこだわりを持たれてると思うんですけど、僕が意識しているのはすっきりとしている後口ですね。

 

後に残らないけどちゃんと存在感のあるコーヒー、“ 日常で飲んでいただけるコーヒー “ というのを目指しています。」

 

増え続けている豆の種類

 

田之畑さん : 

「OPEN当初11種類から始まりましたが今ブレンド含めて16種類くらいの豆を提供しています。

焙煎をするたびに毎回カップテストとかカッピングとかって言う味見をするんですけどそれを怠らないことでいろんな発見があるんです。

お店によっては一度焙煎の度合いを決めると以降は毎回そのパターンで焙煎して味見をしないということも多いんですが、同じようにやっていても実際に味を見ると「今日はちょっと酸味が強いな」とかブレがあったりする。

それってなんなんだろうと日々試行錯誤しています。

 

うちのメインでもあるPIPPI BLENDも毎回ブレが生まれる中で調整していて今回ちょっと物足りないからブラジルを足してみたらうまくいったとか、同じようにやっているのに同じじゃないというのがおもしろいですね。

すごく難しいですけど(笑)

 

コーヒーに詳しくないという方にはまずうちのハウスブレンドを飲んでみてほしいです。

五角形のグラフで言うときれいなカタチになるようなバランスなのでこれをベースにもっと苦いもの、より個性的なものを試してもらって自分の好みを探してもらうとおもしろいと思います。」

 

一番うれしかったおかわり。

 

ーこれまでコーヒー屋をされてきて一番印象的だった出来事はどんなことでしたか?

 

田之畑さん : 

「今まで飲めなかった人が飲んでくれたりとかおいしいと言ってもらえることはとても励みになりますね。

 

以前近所のおばあちゃんがいらして『私コーヒー飲めんちゃんね。』と言われて。

ソフトドリンクも一応用意はしてるんですけどその方はそれでもコーヒーを飲んでくれたんです。

そしたら飲めないと言われてたのにおかわりまでしてくれて、結局コーヒーが飲めるようになったんです。

あれはコーヒー屋さんをやっていて一番うれしいおかわりでしたね。」

 

これからのこと。

 

田之畑さん : 

「僕はここでずっとやっていきたいと思っています。

修行した『焙煎屋』さんは豆屋さんで店内で飲んだりはできなかったんですがそのお店が理想に近いですね。

 

家族経営で平尾が本店なんですけど警固のお店は息子さんがされている。

自分は人を雇いたいという気持ちはあんまり無くてお店を継ぎたいとかここで勉強したいと言ってくれる人が出てきてもらえるとそれはそれで嬉しいんですけど、二店舗目三店舗目というのは考えていなくて。

ここでずっと地域に根ざしてお店をやり続けていたい。

そうしながら息子や娘がやりたいとなって継いでもらうということになるのであればそれはとてもうれしいですけどね。」

 

ーそうなるととても素敵ですね。

今後のお店の展開を僕も楽しみにしています。

今日は貴重な時間をありがとうございました。

 

 

 

この日、店内でお話を伺っている最中業者の方や「いつもの200gください。」と常連の方が来られたりしていましたがその誰もがもう顔なじみといった様子で気さくに会話をされていました。

 " 地域に根ざしてお店をやっていきたい " という想いがこの町に浸透し始めている証拠なのかもしれない。

 

豆へのこだわりだけでなく、誰にでも入ってきてもらえるお店でいたいと常にお客様の目線でいる田之畑さんの揺るぎないもうひとつのこだわりがこのお店の芯の部分なように思います。

 

田之畑さんが深江の町に蒔いた種がゆっくり根を広げて、木陰を作る木になりつつある。

これから夏が近づく糸島、羽根を休めにくる鳥のように心と体を休めに多くの方がTaishoさんのコーヒーを求めて足を運ばれるのではないでしょうか。

 

ちょっと一息。

そんな言葉がとてもぴったりな場所です。

 

 

文・絵 : 山口達也

写真 : tokuto(写真家)

 

《SHOP情報》

TAISHO COFFEE ROASTER -タイショウコーヒーロースター-

場所 : 福岡県 糸島市二丈深江569-1

OPEN 11:00-19:00

定休日 : 日 

TEL : 092-334-3328

Facebook : https://www.facebook.com/TaishoCoffee/

Web : http://r.goope.jp/taishocoffee-rst

Instagram : https://www.instagram.com/taishocoffeeroaster/

 

 

 

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